治療教育外来

本邦初の治療教育外来併設。

屋我地診療所で行う芸術治療教育とは

一般の社会常識識では、障害を持っている子どもたちはいわゆる健常児よりも劣った存在であり、故に多くの治療療教育がその劣等性を如何に克服するか、如何にして障害児を健常児の水準に近づけるかということを目標にしています。

しかし、⼀度でも「障害児」と呼ばれる子どもたちと日々を過ごしたことのある者ならば、必ずや違った考えを持つでしょう。

自閉症児の類い稀な感覚世界、ダウン症の⼦どもの持つ⼈人間本来の共感と愛着、ADHD 注意⽋陥多動性障害という名に括られる彼らの驚くべき集中力、LD 学習障害の子どもらが特定領域の能⼒を代償にして得た深い藝術性と超感覚性、等々、彼らの⾝近に居る者は、それらの事実や能⼒に畏怖と敬愛の念を抱かざるを得ません。その認識の上に立って初めて、私たちは彼らの苦労、即ち現実社会との不適合について、彼らに寄り添って励まし、⼀方で社会の側の変革を求めながら、現実と折り合いをつける⼿伝いをすることができるのです。

自閉症を始めとする「⼼の保護を求める⼦どもたち」のため、全ての枠を取り払った治療教育・芸術教育が急務です。
自閉症・アスペルガー症候群・レット症候群・LD ・ ADHD…発達障害といわれる⼦どもたち。 ダウン症をはじめとする、染⾊色体異常とカテゴライズされる子どもたち。 不登校・引きこもりの⼦どもたち。 ⾮⾏と呼ばれる不注意に育てられた⼦どもたち。

総称して「⼼の保護を求める⼦どもたち」

彼らを早期に発⾒し、それぞれが必要とする療育を授け、すなわちそれぞれが求める芸術教育を施し、彼らのうちにまどろむ隠された能⼒を引き出すこと。家庭や学校そして地域社会の中に彼らの居場所を保障すること。・・・そのためには、親のとらわれのない理解が必要になります。的確に診断を下し、親の不安や 躊躇を払拭して、その⼦どもの状態と時期に相応しい治療教育を励ますことのできる医師が必要になります。 そして実際に日々の生活を共にし、⽇々の学習を共にし、⽇々の遊びを共にして、彼らの成⻑に寄り添う保育⼠・幼稚園教師・学校教師・治療教育者の存在が必要となります。且つ、周囲の⼤⼈たちは、個別にその⼦と関わるだけでなく、彼ら同⼠つまり⼤⼈同⼠が連絡を取り、忠告をし合い、補完し合う関係性を築くことが望ましいと云えるでしょう。かつての伝統社会では、⼦だくさんであったとはいえ、いや⼦だくさんで あったからこそ、複数の⼤⼈人たちの⽬が絶えずひとりひとりの⼦どもに注がれていました。⽗母・祖⽗母・ ⽗母の兄弟姉妹たち等々です。

密室は⼦育ての環境としては望ましくありません。⾵通しの良い環境の中でこそ、⼦どもらは健やかに育ちます。ましてや、繊細な感覚を持つ「⼼の保護を求める⼦どもたち」にとっては、ちょっとした判断のミスが、後年取り返しのつかない結果を呼ぶことになりますので、分野を越えて知恵を寄せ合うことが理想で す。実際、アスペルガー症候群であるにもかかわらず、統合失調症と誤診されて⻑年薬の副作⽤に苦しんだ 例が、数多く報告されています。

未来を開き次代を担うのは、健常児だけではありません。「⼼の保護を求める子どもたち」の持つ鋭敏な感覚と豊かな感性が文化の中心に据えられた時にこそ、成熟した社会が訪れるのではないでしょうか。

そのような気概を持って、こちらでの治療教育を始めたいと思います。⼦どもたちのために理想的な地域社会を創るには、みなさんのご理解とご協⼒が⽋かせません。どうぞよろしくお願いいたします。

治療教育外来の概要

屋我地診療所では、毎週月曜日に治療教育外来を行っています(完全予約制)。
親しみやすい芸術要素を取り入れた、実績ある個別セラピーです。
状況・需要に応じてグループセラピーを行うことがあります。

対象

1. 発達に特性があるために、特別な保護・療育を必要とする子ども
2. 上項にもかかわらず、周囲の無理解により心に傷を持ってしまった子ども
3. 既に次のように診断されたことがある、またはそう推察される子ども:自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、ダウン症など染色体異常、不登校、引きこもり

治療教育責任者

川手鷹彦(オフィシャルページはこちら

担当

仲宗根美奈(毎週月曜)  川手鷹彦(不定期)

料金

川手・仲宗根のペアーでの治療教育外来 1時間 5,000円(30分の場合は 2,500円)
仲宗根のみによる治療教育外来     1時間 3,000円(30分の場合は 1,500円)

 

診療所内に展示してある絵画について

ハンス・イエニー Hans Jenny:動物画家、医師、科学者

1904年スイス・バーゼル生、1972年ドルナッハ没
バーゼル郊外ドルナッハの診療所で、臨床医として多忙且つ献身的な日々を送りつつ、科学と藝術の両分野における偉大な業績を残す。
1954年『典型Der Typus』を著し、あらゆる動物の形姿の法則を解明する。
1964年映画『振動の世界』を発表。
1969年には『KymatikⅠ』を上梓し、17世紀の物理学者クラドニーによって行われた、音の形状化実験を発展させ、様々な媒体と深遠な世界観による研究方法論を確立。〈Kymatik〉(波動学)という新しい化学分野を創始する。音と響きが美しく見事に可視化する壮大なる実験は、同年『ユネスコ』誌等、多くのメディアに取り上げられ、世界の科学者・藝術家・神秘化を震撼させる。
一方絵画においても、独自の画風を生み出す。
1950年フランス・ニースで開催された絵画展には、当時スペインの英雄とまで云われていたミロが訪れ、『鹿』(1938年制作)の絵の前に跪き、会場から走り去る。その晩、同市内で晩餐を共にしたミロは、イェニーに向かって、「私も実は絵を描き、絵画展を開いています」と恥じ入るように話した。
またシャガールは、この新進画家の作人を前にして古くからの知己に会ったかの様子で、「彼は私と同様、神秘家である。私は彼を愛す」と語った。

動物たちは世界言語から生まれた象形文字である。そしてまた、万有とその似姿に人を導く印でもある。その封印は、動物を愛するものにこそ解き明かされる。
ハンス・イェニー

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