治療教育という道 その三
自閉症、発達障害、アスペルガー症候群、自閉症スペクトラム、高機能自閉症、等々、様々な名称が、様々な経緯で使われる
現在、一般的に使用されるのは、アメリカ精神医学会によって2013年に出版された精神障害の診断と統計マニュアル DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth)
による定義であり、そこでは「自閉症スペクトラム障害(ASD;Autism Spectrum Disorder)」とされている
ところが、これらの名称は、いずれも便宜上の分類で、自閉症児、或いは自閉症者全てを抱合しきれてはいないし、その本質にまで届いているとは言えない
というのも、現在私たちが「自閉症」という名称で扱うものは130〜200の異なる変異遺伝子の、二つ以上が発現することによって発症する多様性であり、それらを現存する診断基準やマニュアルによってカヴァー/包括することができないからである
そこで重要なことは、症例名云々よりも、現場を預かる者たちの自己研鑽と互いの連携である
ひとりの子どもに、複数の大人、医師、看護師、治療教育者、藝術家など、違う分野、バックグラウンド/背景、能力、経験の人間が関わり、意見を建設的に示し合い、また互いのcapacity/許容力を補完し合うべきである
それは自閉症が、人類進化の未来への道標として存在しているからで、ひとりの健常者の知的能力では理解しきれないからなのだ
因みに私ども屋我地診療所の治療教育外来グループの陣容も以下の通り多様性に富んでいる
代表 川手鷹彦 治療教育者、演出家、朗誦家、劇作家
法務省保護局の委嘱により総指揮・演出した、心に傷を持つ子どもたち・道を探す若者たちの演劇プロジェクト「オイディプス王」が2002年、地道な更生保護活動に功績のあった個人や団体に贈られる「瀬戸山賞」を受賞
診療所所長 小野寺隆 医師、令和4年度沖縄小児保健賞受賞
現場責任者 仲宗根美奈 ピアニスト、治療教育者
現場スタッフ 小野寺かおり 看護師
現場スタッフ 相原愛子 声楽家
総合マネージメント 小野寺隆仁
更には、複数人による対応に加え、高い藝術性が欠かせない
彼らの神経系には、特定箇所の不具合とそれにバランスを取るように顕われる他の多くの優れた《異常/異能》発達が見られ、そのことが私たちの理解を遥かに越える状況を生み出すのだが、唯一、優れた藝術活動、音楽、詩歌、演劇、舞踊、囲碁、天文学等が、そのような《異能》を充足させることができるからである
私たちの外来では、わらべうた 、昔話、ごっこ遊びを基本に、ひとりひとりの子どもの状況に合わせて、演劇活動への紹介・推奨、抒情詩、絵画(水彩、墨絵)の実践などを処方している
二〇二二年十一月十日 中国北京
屋我地診療所治療教育外来代表
川手鷹彦
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